足腰が衰え、思い通りに動くことができない高齢者に使われることが多い「ロコモ」。今、子どもたちもロコモと無関係ではなくなってきていることを知っていますか?
今回は「子どものロコモ」の名付け親である柴田輝明先生にお話をお聞きしました。
柴田 輝明先生
医療法人社団天徳会北本整形外科 院長
埼玉県医師会学校医会 常任理事
整形外科医およびスポーツドクターとして山口県山口市の柴田病院に勤務後、埼玉県北本市に1990年、北本整形外科を開設。2007 年より埼玉県内の学校で運動器検診を推進。子どものからだに起きている異変と現代の生活環境、ジュニアスポーツや学校での運動器健康教育のあり方に警鐘をならす。著書に「跳び箱に手をつき骨折する子ども−子どもの『運動機能の低下』の実態−」(ポプラ新書)。
最近、子どものからだに どんな異変が起きているのですか?
「体育座りすると、後ろにひっくり返る」「床を雑巾がけする時、手でからだを支えきれず顔から転んだ」「跳び箱に手をついて骨折した」など、以前では考えられなかったような異変が起きています。診察でも「なぜこのような状況でこんなケガを?」という症例を見かけるようになりました。これは、筋肉や関節、骨などのからだを支えたり、動かしたりする運動器の働きが弱くなっているためです。いわゆる「子どものロコモ」が増えているのです。
「子どものロコモ」について教えてください!
運動器の働きが低下もしくは不調になることで、日常生活や学校生活、またスポーツ時に支障をきたす状態、もしくは、これから支障をきたすリスクが高い状態のことを「子どものロコモ(ロコモティブシンドロームの略)」と言います。2010〜2013年に埼玉県内の学校で行った運動器検診では、運動器に何らかの問題がある生徒が40%以上いました。「子どものロコモ」は放っておくと、命にかかわる大きなケガにつながることもあり危険です。そうならないためにも、チェックと予防が大切です。
どうして子どもが ロコモになってしまうのですか?
大きな原因は「運動不足」と「運動し過ぎ」の2つです。生活環境の変化によって、外で遊ぶ機会が減り、室内でスマホを見たりテレビゲームをしたりして過ごすことが増えました。一方で、部活動やクラブチームなどで練習をやり過ぎている子どももいます。からだが成長している時期の「運動不足」も「運動し過ぎ」も、ケガをしやすいからだを作る原因となります。
家でできるロコモのチェック方法はありますか?
次の動きでチェックしてみてください。1つでもできないものがあれば、「子どものロコモ」の可能性があります。
できない項目があった場合、 どうすればよいですか?
運動器の働きを良くするための基本は正しい姿勢です。普段の生活でイラストのような姿勢がとれているか、確認してください。大人にとっても重要ですから、親子で正しい姿勢を身につけて、健康で長生きできるからだづくりを始めましょう。
もっと知りたい!
もっと知りたい! という方は、柴田先生の著書「跳び箱に手をつき骨折する子ども−子どもの『運動機能の低下』の実態−」(ポプラ新書)をお読みになるか、「子どものロコモ」で検索をしてみてください。
インタビュー実施日|2019年12月20日
イラスト|佐藤香苗