世界的にみても睡眠時間が短い日本の子どもたち。皆さんのお子さんはしっかり睡眠をとれていますか?
今回は、子どもの脳の発達についてご研究をされている成田奈緒子先生に、お話をお聞きしました。
成田先生は子どもの脳がよく育つためには、正しい睡眠習慣をつけることがとても大切だと仰っています。
成田 奈緒子先生
小児科専門医・医学博士
文教大学教育学部教授
平成27年度に「ニューロフィードバックを用いた自閉症スペクトラムの前頭葉機能訓練法の開発」にて、当財団の研究助成金を獲得。文部科学省「リズム遊びで早起き元気脳」実行委員長を務めるなど、社会活動も行う。子育てを応援する専門家によるワークショップ「子育て科学アクシス」も主催。
「子育て科学アクシス」 WEBサイト http://www.kk-axis.org/
著書に「『睡眠第一!』ですべてうまくいく」(双葉社)「早起きリズムで脳を育てる」(芽ばえ社)ほか多数。
「寝なくても元気です!」という人がいますが、 人は寝なくても大丈夫なのでしょうか?
睡眠は動物である人間にとって、命を守るために必要な生理現象です。定期的に脳と体を休ませなければ、危険が身におよんだ時に反射的に行動もできないし、適切に判断することもできません。また、寝不足で疲労が回復しないと、色々な病気が起こる原因になります。極端に言えば、睡眠をとらないことは自殺行為とも言えます。
子育てでは、どうしても「学ぶこと」が優先されますが、まずは「寝ること」を第一に考えてほしいですね。
子どもはどれくらい寝ればいいでしょうか?
子どもが健全に発達するために必要な睡眠時間は、5歳で11時間、9歳で10時間。18歳でも8時間以上は必要です。これは、80年以上、世界中の小児科医がバイブルにしている教科書『Nelson Textbook of Pediatrics』に書いてあります。
でも、実際にこの睡眠時間を確保できている日本の子どもはほとんどいません。国の調査を見ても、だいたいこの指標のマイナス2時間しか寝ていません。塾や習い事で、夜まで忙しい子どもも多いようです。なので、せめて理想の睡眠時間から1時間をひいた時間は寝るようにしましょう、と勧めています。
十分に寝れば、何時に起きてもいいですか?
太陽が昇る時間に起きることが、とても大切です。季節によって、日の出の時刻は違いますが、朝6時前後の起床がおすすめです。朝きちんと起きて、太陽の光を浴びると、体と心の健康を保つのに重要なホルモンがたくさん分泌されます。もし前の日、寝る時間が遅くなってしまっても、起床時間は変えないようにしましょう。
「子どもがなかなか寝てくれない…」と 困っている親御さんも多いようです。 どうしたらいいでしょうか?
なかなか寝付けない子は、夜遅くまで光を浴びている場合があります。人は、暗くなることで脳からメラトニンというホルモンが出て、自然と眠くなるようになっています。でも、部屋の照明が明るかったり、テレビやスマートフォンの光が目に入り続けると、脳が眠気を作れなくなってしまいます。
テレビやスマートフォンは早々に切り上げて、本や雑誌を眺めたりするのがおすすめです。間接照明で夜を過ごすのもいいですね。
睡眠不足に悩む親御さんやお子さんに メッセージをお願いします。
忙しい現代では、大人は仕事や飲み会、子どもは塾や習い事などで、毎日理想の睡眠時間をとることは難しいかもしれません。まずは、できる日には早く寝て、太陽と一緒に起きる。そういう習慣をつけることから始めてみてください。
インタビュー実施日|2018年8月24日