ドクターによる子どもの健康お役立ち情報

1月21日、厚生労働省は5~11歳の子どもへの新型コロナウイルスワクチン接種を承認しました。
オミクロン株が猛威を振るう中、子どもの感染者も急増しています。
早ければ3月からスタートするワクチン接種に悩まれている親御さんも多いのではないでしょうか?
今回は、子どもへの新型コロナワクチン接種について、自治医科大学名誉教授で当財団の理事・選考委員を務める桃井眞里子先生にお聞きしました!

桃井 眞里子先生

自治医科大学名誉教授、信州大学医学部客員教授
厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 元部会長
当財団 理事・選考委員

Q1.5~11歳の子どもに新型コロナのワクチンを接種するメリットを教えてください

基礎疾患をお持ちの場合には、小児でも新型コロナウイルス感染症にかかると重症化リスクは高くなりますので、接種が推奨されています。小児全体でみると、日本では新型コロナウイルス感染症による死亡例はありませんが、他国では死亡例も報告されており、基礎疾患をお持ちの場合がほとんどです。健康な小児の場合には、現時点のオミクロン株による重症化リスクは極めて低いですが、今後どのような毒性の高い変異株が出てくるか予測不能です。ワクチン接種による発症予防効果は、オミクロン株に対しては低いと言われていますが、それ以前の株では90%前後と言われています。

なお、新型コロナウイルス感染症にかかる小児では川崎病に似た病態が出ることがあります。日本人ではそのような病態は発症しにくいと言われていますが、後遺症全体については未知数です。

Q2.逆に、デメリットを教えてください

通常の予防接種は皮下接種ですが、今回は筋肉内注射ですので、接種後の痛みは通常より強く出ます。ですから、予め子どもにも「痛くなるけれど大丈夫だよ」と説明しておくと過剰な不安が避けられます。アメリカで870万回の小児への接種で報告されている副反応のうちで多いのは、発熱、筋痛、頭痛、だるさなどです。心筋炎の発症は80万件に1件程度で、低頻度でかつ軽症です。16~25歳に比較して副反応の頻度は低いと報告されています。副反応は、接種直後の症状こそあるものの重篤な病態は極めてまれで、世界中でこれだけ接種されていますので、今後、新たに深刻な副反応が判明するということは起きにくいと思われます。

Q3.副反応で特に気をつけた方がいい症状(すぐ病院に行くべき症状)は何ですか

心筋炎が起こったケースはいずれも軽症と報告されていますが、接種から数日後以降に、動くと息切れがしたり、息苦しさなどがある場合には病院を受診してください。発熱や軽いだるさ程度で、食事が摂れていればご自宅で1,2日様子をみてください。発熱への対処法は通常と変わりません。最も安全に使用できる薬はアセトアミノフェンです。市販薬でもこの成分の解熱鎮痛薬であれば、年齢に応じた量で使用できます。使い慣れている薬があっても、成分は確認してください。基礎疾患がある場合には、予めかかりつけ医と対処法を相談しておいてください。

Q4.対象年齢ではありますが、自分の子どもは体が小さいです。接種して問題ありませんか。

例えばインフルエンザワクチンでも年齢に応じた適切なワクチン量を接種します。今回の新型コロナワクチンの場合は、ワクチンに含まれる成分自体が5~11歳の小児用に少なく製造されており、かつ接種量も少ないワクチンです。体の大きさに関係なく年齢が5-11歳であれば、小児用ワクチンの接種対象であり、体が小さいから副反応が強く出るということはありません。

Q5.色々な情報を聞いても、接種するか迷います。判断に役立つポイントがあれば、教えてください。

個人防御という視点でみれば、オミクロン株による重症化はまれなので健康な小児には接種しないという選択もありえます。一方で、軽症といっても咽頭痛がひどくて飲水もできず点滴が必要な例、咳がひどくて睡眠できない例など、重症肺炎は生じにくいというだけでかなりつらい状態になる例も少なくありません。このような状態をできるだけ避けたい場合には接種を考えてください。また、毒性の強い株が流行してからの接種では遅いことも危惧されますので、今のうちに接種するという選択もあるでしょう。

さらに、オミクロン株のように重症化はしにくいが、感染力が強い株の場合は、個人防御と同時に、家族全体の防御が重要になります。ご高齢の方や基礎疾患をお持ちの方が家族にいるかどうかも考慮して接種・非接種を考えてもよいと思います。

ウイルスの毒性や感染力の強さなどを十分理解するとともに、家族全体という視点も踏まえて、接種するかどうか決めてください。

Q6.接種有無をめぐって友達との関係に良くない影響を及ぼさない為に、親としてできることはありますか。

子どもに、接種する理由・しない理由をよく説明してください。よく説明することは接種後の不安を軽減することにも役立ちますし、いろいろな判断をする人がいてよいことを理解するはずです。

インタビュー実施日|2022年2月8日